はじめに
私は今年(2024年)の3月から映画についてのブログを書き始めたのですが、ブログ作成を続けていく中で自分の好きな映画について改めて考える機会が増えました。
好きな映画を考えてみて私は、何度も鑑賞することによって様々な解釈を得られるような作品に惹かれることに気づきました。
そんなジャンルの作品で「ペンギン・ハイウェイ」というアニメ作品があります。
この映画は、哲学的な内容であるが故に、解説がないと分かりにくかったり、作中で語られないポイントがいくつかあり、鑑賞者にその解釈を委ねています。
今回はそんな「ペンギン・ハイウェイ」について考察をしていきます。
この先、ネタバレ要素を含んでいますので、これから鑑賞を予定している方はご注意ください。
また、当ブログではネタバレなしのレビュー記事も投稿してますので、良ければ合わせてご覧ください。登場人物の紹介もしていますので、ぜひご覧ください。
それでは、本作品のあらすじをご紹介したうえで、本編で明言されていない事柄や、理解しにくい部分を、いくつかの項目に分けて解説していきます。
考察の内容は、個人的な解釈に基づいていますので、あくまで素人の意見としてお楽しみいただけると幸いです。
あらすじ(ネタバレ注意)
好奇心旺盛で勉強熱心な少年アオヤマ君は、ある日、街に突如ペンギンが出没したことを解明するために研究を始めるが、それにはアオヤマ君が好意を寄せている歯科医院のお姉さんがペンギンを生み出せることを知り、街でのペンギンの出没にお姉さんが関係していることに気づく。
研究を続ける中で、クラスの優等生ハマモトさんから、近所の森の奥の草原で、謎の球体「海」があることを教えられる。アオヤマ君はペンギンの研究と並行して「海」の研究も行い、お姉さんと「海」、そしてペンギンに因果関係があることを見つける。
そんな中、アオヤマ君のクラスメイトから「海」の話を聞いた国立科学技術大学の研究員であるハマモトさんの父が、研究員を集めて調査隊を結成し、「海」についての研究に乗り出す。しかし、「海」は異常に膨張をし始め、ついには街を覆いつくし、調査隊をも飲み込んでしまい、街では避難勧告が出されていた。
アオヤマ君とクラスメイトは、調査隊を救う為、学校から抜け出しますが、アオヤマ君以外は警察に取り押さえられてしまう。逃げ切ったアオヤマ君はお姉さんに会いに行き、お姉さんの正体は人間ではないこと、「海」は世界の歪みであり、お姉さんとペンギンは「海」からエネルギーをもらい、世界の歪を修復しているということを推測した。しかし、歪みの修復が完全に終わってしまうと、お姉さんのエネルギー源である「海」が消滅することを意味し、お姉さんもいなくなってしまうことをアオヤマ君は危惧するが、それでもお姉さんと共に「海」に入り、調査隊の救助に行くという決断をする。アオヤマ君とお姉さんは「海」で調査隊を見つけ、ペンギンに「海」を破壊してもらい、元の世界に帰還した。アオヤマ君はお姉さんが消えゆく運命を悟り、お姉さんの謎を解き、また会いに行くと約束をし、お姉さんと別れる。ひと夏の不思議な出来事を通じ、アオヤマ君は立派な大人になり、お姉さんと再会を果たすことを誓うのであった。
考察
「海」とは何だったのか
この作品で一番理解しにくい部分である「海」について最初のトピックとして取り上げることにします。
「海」とは一体何なのかという謎を紐解く為にはまずはこの作品での「世界の果て」について理解をする必要があります。
アオヤマ君が作中でペンギンとお姉さんの関連性、そして世界の果てについて研究をしていましたが、その結論を出すまでに難儀をしていました。研究が難航する中で、アオヤマ君は父に、あるヒントをもらいます。
世界の果ては遠い外側にあるとは限らない。そう父さんは考える。(中略)世界の果ては折りたたまれていて内側にもぐり込んでいる。
※作中のアオヤマ君の父の台詞より抜粋
アオヤマ君の父は、今存在する世界を小さな袋の内側に入れることはできないが、袋の内側をめくって、内側の部分を外に向けることで、世界を小さな袋の内側に入れたと捉えることもできると説明します。
この考え方は、この作品における「海」の存在に対しての解釈の仕方に転用できる伏線になっています。
「海」は、この世界からどこかの世界の一部分につながっているというわけではなく、広大な「世界の果て」そのものであり、この世界が「海」という「世界の果て」の内側にあるのではないか。
アオヤマ君は、「海」の謎に対して、父の考えを利用し、このような結論にたどり着いたのです。
アオヤマ君はなぜお姉さんに思いを寄せているのか
そもそもなぜアオヤマ君はお姉さんのことが好きなのでしょうか。
また、謎が多いお姉さんですが、アオヤマ君にとってのお姉さんはどのような存在なのでしょうか。
作中では、アオヤマ君は、最終的にお姉さんを「人間ではない」と位置付けていました。もっと詳しく説明すると、お姉さんは「世界の内側にもぐり込んだ世界の果て」である「海」を壊し、修復する役割を担っているペンギンを作っていると、アオヤマ君は結論付けています。
ここで、アオヤマ君という人物を深堀すると、アオヤマ君自体が大人びた性格であると同時に、大人への憧れを持った人間であると言えます。そんなアオヤマ君からするとお姉さんの姿は大人びて見えるので、思いを寄せているのではないかと考えました。さらにそのお姉さんに認めてもらうのがアオヤマ君にとって大人になったということになるのでしょう。
また、アオヤマ君は研究熱心で、好奇心旺盛な側面も持っているので、ミステリアスなお姉さんを研究の対象として興味を持っていると考えることもできると思います。
アオヤマ君はお姉さんを単純に人間的に好きと言うこともできますが、このような捉え方もできるのではないでしょうか。
「海辺の街」とお姉さんの関係性
作中でお姉さんは、幼少期に「海辺の街」に住んでいたと話していますが、この「海辺の街」とお姉さんにはどのような関係があるのでしょうか。
「海辺の街」とお姉さんとの関連性を列挙していくと、
- お姉さんはかつて「海辺の街」に住んでいたと語られている。
- ストーリー序盤でお姉さんの部屋に飾られていた「海辺の街」の写真と似ている場所が、「海」の中に存在していることが、ストーリー終盤にアオヤマ君とお姉さんが「海」に飛び込んだ時に確認することができる。
- お姉さんは「世界の内側にもぐり込んだ世界の果て」である「海」を壊し、修復する役割を担っているペンギンを作っている。
これらの点を踏まえると、お姉さんは「海」の中で生まれて育ち、アオヤマ君が生きている世界に前述したような役割を全うするために図らずも「海」からやってきたと考えるのが自然でしょう。
そうなると、「海辺の街」大きくとらえると「海」はお姉さんからすると故郷になるわけです。はっきりとした記憶がなくとも「海辺の街」にお姉さんが惹かれる理由はココにあったと考えることができます。
ラストシーンの意味とは
ラストシーンでアオヤマ君は、ペンギンを初めて見つけた草原で夏休みに「海」の研究をする際に「海」に投げ入れてそのまま行方不明になった、ブロックで作ったペンギン号を見つけます。
なぜ、草原に行方不明になっていたペンギン号が突然現れたのでしょうか。
私は、「海」で生きるお姉さんがペンギン号を、アオヤマ君が生きる世界に戻したと考えていて、このように考えると「海」は、まだどこかでアオヤマ君の生きる世界と繋がっているということの裏付けになり、お姉さんとアオヤマ君がまた会える可能性があるということを示唆していると思いました。
まとめ
今回は、「ペンギン・ハイウェイ」について詳しくご紹介しました。
若干難解な内容の作品ですが、深く理解してから鑑賞すると、よりこの作品の素晴らしさ、面白さを感じられると思います。
この記事を読んでいただき、「ペンギン・ハイウェイ」の魅力を1人でも多くの方に知っていただけると幸いです。
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